ArmingtonモデルとMelitzモデルの厚生効果が等しくなる場合
Arkolakis et al. (2012)から、貿易の厚生効果Wは、国内財に対する相対需要(=1-輸入浸透率)λと「貿易の弾力性」εに依存することが言える。
dW/W=dλ/λ^(1/ε)
ある条件を満たすときに、輸入需要の背景にCES型の集計関数があることになる(R3)。
この条件とは、Armingtonモデルであれば、Armington関数の代替の弾力性をσとして、
ε=1-σ
であること。
Melitzモデルであれば、Paretoのkとの関係が、
ε=-k
であればよい。
ここから、σとkについて、
σ=k+1
が成り立てば、異なるモデルが同じ大きさの厚生効果を予測することがわかる。
実際にそうなるか?
Balistreri and Rutherford (2013)
レシピ
- GTAP v.7
- 9財9地域5生産要素
- うち2部門(EIT&MAN)のみMelitz部門
- σ=3.8, 5.6(=k+1)
- k=4.6
σ=3.8はBernard et al. (2003)から。k=4.6は、σ=3.8を仮定したBalistreri et al. (2011)による構造推定から。
シナリオ
- 輸入関税
- 輸出固定費削減
結果
Melitzモデルでσ=3.8としたときの結果と、Armingtonモデルでσ=5.6(=k+1)としたときの結果が同じになるかというと、ならない。より詳細には、前者の厚生効果が、後者より(ほとんどの場合)大きい。言い換えると、次に示すDixon et al. (2015)のように、Armingtonモデルの代替の弾力性をもっと大きくしてやらないと、厚生効果は同じぐらいにならない。
Dixon et al. (2015)
レシピ
- 数値例
- 対称な2財2地域モデル
- σ=3.8, 8.45
- k=4.6
σ=3.8, k=4.6は、Balistreri and Rutherford (2013)がBernard et al. (2003)とBalistreri et al. (2011)に依拠していることに倣う。
結果
Melitzモデルでσ=3.8としたときの結果と、Armingtonモデルでσ=8.45としたときの結果が同じになるということなので、σ=5.6(=k+1)としたArmingtonモデルとは結果が同じにならない。
まとめ
dW/W(Armington; σ=3.8) < dW/W(Armington; σ=5.6) < dW/W(Melitz; σ=3.8)≒dW/W(Armington; σ=8.45)
参考文献
- Arkolakis, C., Costinot, A., Rodriguez-Clare, A. (2012) "New Trade Models, Same Old Gains?," American Economic Review 102(1), 94-130.
- Bernard, A. B., Eaton, J., Jensen, J. B., Kortum, S. (2003) "Plants and Productivity in International Trade," American Economic Review 93(4), 1268-1290.
- Balistreri, E. J., Hillberry, R. H., Rutherford, T. F. (2011) "Structural Estimation and Solution of International Trade Models with Heterogeneous Firms, Journal of International Economics 83(2), 95-108.
- Balistreri, E. J., Rutherford, T. F. (2013) "Computing General Equilibrium Theories of Monopolistic Competition and Heterogeneous Firms," in: Dixon, P. B., Jorgenson, D. W., (eds.) Handbook of Computable General Equilibrium Modeling, Chapter 23, Volume 1, Elsevier: 1513-1570.
- Dixon, P., Jerie, M., Rimmer, M. (2015) "Modern Trade Theory for CGE Modelling: the Armington, Krugman and Melitz Models," GTAP Technical Paper No. 36.
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