- McDonald, S., Robinson, S., Thierfelder, K. (2016) "Exchange Rates, Numéraires and Real Exchange, Rates in Global Computable General Equilibrium Models," Presented at GTAP 2016@WB/DC, June.
Q. 基準財の取り方は本来自由なはずだが、世界貿易CGEモデルではうまくいかない(結果が異なる)
1国モデル(一般的には「中身を描写しないROW」を含む多国・他地域モデルでも)では、シミュレーション結果は基準財の選択に依存しない。たとえば、細江ほか(2016, 第6章)の現実的な応用一般均衡モデル(stdcge.gms)において、
pf.fx("LAB")=1;
としても、
pf.fx("CAP")=1;
としても(また、それら以外でも)、解(数量と相対価格)は同じ。
しかし、n国世界貿易モデルではそうは問屋が卸さない。
理由は?
- 1国モデルと同様に、n-1国について外貨建て経常収支を固定することはできる。
- ここで「外貨」とは、最後に残った第n国の通貨のこと。
- しかし、最後の1国については、自国建て経常収支を固定することしかできない。
- この場合、(少なくとも)第n国にとっては、基準財の選択次第で、外国から流入する資金(経常収支赤字)の自国通貨建てでの価値が違ったものになってしまう。
- 第n国が受けるこの影響は、当然、他のn-1国に対して何らかの影響を与えてしまうことになる。
ということ。翻って、1国モデルでこの問題が発生しないのは、「外国」の中身を描写しないのでその基準財を考える必要がなくなり、)4点目の問題が発生しないから。
なお、ちょっと考えればわかるように、経常収支が均衡していればこの問題は発生しない(が、そんな状況は、現実にはまずあり得ない)。
ディスカッション
聴衆 「それで、どうせいちゅうねん!」
報告者 「俺は知らん。リタイヤした。君らの仕事や。」
全員 「(笑)」
参考文献
- 細江宣裕, 我澤賢之, 橋本日出男 (2016) 『テキストブック応用一般均衡モデリング(第2版)』, 東京大学出版会.
- 第6章サンプル・モデル: stdcge.gms
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