- 黒木登志夫(2016)『研究不正: 科学者の捏造、改竄、盗用』, 中公新書.
- 黒木登志夫(2015)「研究不正: Scientific Misconducts」, 第7回学術シンポジウム: 科学研究のよりよき発展と倫理の確立を目指して, 学術研究フォーラム・日本学術振興会, 11月27日.(講演資料)
最近いろいろ話題なので読んでみた。数多くのケースが紹介されている。ただし、大半は自然科学系。したがって、ラボ(チーム)による研究活動がしばしば前提になっている。一方、自分はだいたい1人で研究することが多いので、学生を指導するときに参考に。
講演資料を見ると話の筋が大体わかるが、重要なのは、本の第2章の「事例集」。(100ページ以上になるので、サブセクションが欲しいところ。)
感想・要点等
研究不正には、
- ボスが自ら不正をするか、部下(若手)に不正を指示、ないし、仕向ける(トップダウン)
- 部下(若手)が自ら不正に手を染める(ボトムアップ)
の2タイプがあり、それぞれに対応策は異なるはず。
平気で不正をする人がいる(サイコパス、ってやつですか?)。もうこれはどうにも止めようがない。
p.23, https://www.jsps.go.jp/j-kousei/data/2015_3.pdf (本の図7-6, p. 260とエッセンスは同じ) |
第1章で「誠実で責任ある研究」が語られていて、これだけ(順番上仕方がないが)読むと、「ご高説ごもっとも。しかし、実際にどうすればいいわけ?」と思ってしまう(良くない態度だけど)。しかし、一連の事例を含めて、最後まで読んだ後にここに戻ってくると、「(現状では)やはり、これしかないよな」と思う(思わざるを得ない)。
不正をするのはごく一部、かつ、その一部が大量に不正を働く。データからは冪法則に従うとか。
「事例に出てくる日本人については、原則イニシャルにする」(pp. 13-14)というのは1つの見識。
最近、何かと吊し上げる風潮があるので(研究に限らずいろいろありましたね)、こういう配慮・冷静さは重要。あくまでも科学が大事なんだから。
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