- 細江宣裕 (2016)「英国欧州連合離脱 : 企業退出と財の多様性喪失」, GRIPS DP 16-12.
- Hosoe, N. (2016) "Impact of Brexit: Firm Exit and Loss of Variety," GRIPS DP 16-14.
夏の自由研究
BrexitのCGE分析はいろいろあるけれども、Melitzでやっているのはなかったのでやってみた。
モデル
- Melitz(2003)型CGEモデルを適用。
- 3ヵ国(UK, EU27, ROW)
- 10部門(うち6部門はMelitz型の規模の経済・企業の多様性あり)
- Melitz型以外に、規模の経済のないArmington型も用いて比較。
ふつうのMelitz型(CGEに限らない)モデルでは、バラエティも国籍も一緒に1段階のネストだが、ここでは、国籍のネスト(Armington構造)とバラエティのネスト(Dixit-Stiglitz)の2つに分離。
シミュレーション・シナリオ
- UK-EU27間でMFN関税賦課
- UK-EU27間で輸送費増加 +1.
- UK-EU27間で輸出固定費増加 +1.
EU財政拠出金は最後に比較するときに考慮する。(モデル内で国際間の所得移転は考えない。)
結果
貿易
- UK-EU27間の貿易は大きく落ち込む(輸出バラエティ・企業数が最悪の場合は半減)
- 輸入関税はそこそこ効く
- 輸送費の増加は大したことない
- 輸出固定費の増加はかなり効く
生産
- UKの農業、食品・飲料の国内生産が拡大
- UKの繊維・衣料、鉄鋼・金属、自動車・輸送機械の国内生産が大きく落ち込む
厚生
- ArmingtonでやったらUKは厚生効果が正値、または、わずかな負値
- Melitzでやったら常に負値。とくに、シナリオ3で大きな損失
- EU財政拠出金(UK GDPの0.5%)の節約分を吹き飛ばす可能性がある
- EU27側は、経済規模の違いを考えると深刻さは小さい
- ROWは漁夫の利
参考文献
- Busch, B., Matthes, J. (2016) “Brexit–The Economic Impact: A Meta-Analysis,” IW Report 10/2016, Institut der deutschen Wirtschaft Köln.
- 竹内康雄(2016) 「欧州の航空・防衛産業、英国投資を再検討: EU離脱受け」, 『日本経済新聞』, 8月2日.
- Inagaki, K. (2016) "Japan Carmakers Weigh UK Options Post-Brexit: Non-EU Levy Could Prompt Exodus of Automakers, Analysts Warn," Financial Times, June 27.
その他
Brexitは無冠詞
最初に英語版を書いて、それを翻訳したらえらい硬い日本語になって、それを元に英語を直して、以下繰り返し、をしていたら混乱してきた。なんとか発散させずに収束させ、英文校正(550AUDぐらい...AUDも安くなったものだ)。
DPに出した後に誤植を数回修正してもらったりしたので、事務局には大変申し訳ありませんでした(平謝り)。
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